井戸書店メイン棚 『すべては人間学から始まる』

井戸書店では、先哲の言葉や思想を中核にした、『すべては人間学から始まる』という棚を設けております。この棚は井戸書店の顔。棚の構成は次のようになっています。

 

  農 ー 精神遺産 - 和 - 日本語

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  食 -  環境 -   人  -  読書

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  医 ー  経済 -   間   - 日本文学

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 科学 ー 地域社会 - 学  ー 教育

 

のようになっています。人間学を起点にして、人間が活動するジャンルに派生して、書籍が陳列されています。

ここでは、当店で開催されている「大人の人間学塾」の課題図書と参加者の感想を紹介させていただきます。

 

第18大人の人間学塾課題図書

人生二度なし』(森信三著、致知出版社)

 

まずは素読。183ページからの「一生をつらぬくものを」、そして、27ページからの「『社会のために尽くす』ということ」を輪読しました。読んだあと、感想を述べ合いました。

 この本の読者想定年齢の20代から30代半ばの、当店のスタッフ二人からは
・「天分の才」は自分にはないのですが、職業を通して社会へ貢献することを頭に置いて、日々の仕事に努めます。
・仕事か私事か、どちらを優先すべきかと考えていましたが、目の前のことに集中します。
・「自己を育ててくれる」読書に邁進したい。
という感想がありました。

 40代からは
 ・20代で読むとピンとこないのではないか。30代の時の父の病をきっかけに、人生について考えるようになった。
・読書は自分の人生を形作るためには大切であることは不動の真実です。
・人生2度なしの思いで、毎日を送りたい。

 50代からは
 ・この本に書かれている事がどれだけできているか考えながら読みました。
・職業に関して、「第一志望がかなえられなかった際には、第二志望の道を『天命』と考えて努力するがよい」には大納得。
・教養とたしなみの違いがわかり、「たしなみ」のある人に自分を高めたい。
・年齢に関係なく、読むべき本です。
・自分が知覚することの大切さを教えてくれました。頭でっかちの人に読んでもらいたい。
・一面的な見方より、多様性を重視する気持ちが強くなりました。
・社会への貢献だけでなく、国民や国家への政治的な立場で、不合理な点を変革することの大切さを学んだ。

 そして、60代からは
 ・10年単位で、何を為すべきか、それができているかを確認することは人生にとっては大切だ。
・234ページに書かれた「人間の一生」、一生で一番おもしろいコースを歩みたい。

第17回大人の人間学塾課題図書

夜と霧』(フランクル著、みすず書房)

 

  ナチスドイツによるユダヤ人の過酷な強制収容所での収容者のうち、どのような人が生き残るのかを、精神医学者であるヴィクトール・フランクルが考察したロングセラーです。平和な時代に暮らす我々が読んで、将来いかなる事態に遭遇しても生き残れるシュミレーションを読了後にできる、そういう意味ではフランクルに感謝しなければなりません。

  極限状態で必要なことは「精神の自由」「豊かな内面」を持つこと。「自分の未来をもはや信じることができなかったものは、収容所内で破綻した。」と述べるように、外的な苦痛も自由な精神があれば、生き延びる大きな架け橋になり、人生には意味があると認識し、その意味に従って、未来へ向けて目的を設定し、その目的に向かえとフランクルは訴えています。

  そして、精神を自由にするには、最愛の人や友と心の中で語り合い、美しい自然や芸術に触れ、ユーモアや笑いに戯れることを勧めています。特に、妻に思いを馳せていた彼が残した言葉が素晴らしい。

  「愛は人が人として到達できる究極にして最高のものだ。」

  「人は、この世にもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれる。」

  過酷な状況に置かれることはあってはならないでしょうが、平時からフランクルの教えに学ぶことが第一義になります。暗い過去であっても、歴史から得る真理は、先人に感謝しつつ守らなければなりません。

  

 人間学塾での感想は 

 

  ・希望を持つから今を生きられる。苦しくことも含めて生きることであることを理解しました。

 

 ・読むのがつらかったが、内面に拠り所を持つ大切さ、すべてを天の賜物として受け入れる、そして、自分に生きる軸を持つことを学びました。東日本大震災発生後もこの本が読まれたことは頷けます。

 

  ・「人は、この世にもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれる」~愛はそれほど生きる上で大切であることを悟りました。 

 

  ・極限の状態でも、精神の自由をしっかりと持つことがキーポイントになるなら、平時でも自覚しなければならない。極限よりも平時が長いはずだから。 

 

  ・人間にとっては楽しみの節目はある。電通の過労死女性社員はクリスマスを境に亡くなった。収容所でも同じ事象は起きている。生きることについて人の心は今も一緒である。 

 

  ・生きる以上は「ここに今いる」、つまり「be」の感性を強く持たなければならない。

 

   ・収容所で精神や心理をいかにすべきかを知ることができ、これからの不測の状況下での生きる力を学んだ。 

 第16回大人の人間学塾課題図書

徳川家康の名言 最後に勝つ理由』(小野小一郎著、アイバス出版)  

 

 NHK大河ドラマ「真田丸」でも、徳川家康は狸オヤジぶりを発揮していますが、最後には戦国の世を平定した英雄です。狡賢いように描かれるために、好きになれない多くの人も、生き様から滲み出されたこの名言集を読めば、家康の人格の高さを評価することになるでしょう。

 

 幼少期、今川家で人質の身に置かれ、また、信長からの疑いから、長男・信康と正妻・築山殿を死に至らされ、耐えることが信条のようになった家康は、8つある遺訓の中に3つ、

 『人の一生は重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。いそぐべからず』『不自由を常とおもえば不足なし』『堪忍は無事長久の基』

という言葉を残しています。ここで怒りを起こせば、最後に勝つことからは遠のくため、

 『いかりは敵とおもえ』

とも言っています。そして、欲望をコントロールすることにも言及し、

 『こころに欲おこらば、困窮したる時を思い出すべし』

とし、自分にとって必要な欲は「公欲」にして、志につなげていくことが大切です。さらに、家康は読書家であり、書籍を探し求めて学んだことから、

 『人倫の道明らかならざるより、自ずから世も乱れ國も治まらずして騒乱止む時なし、是の道理を悟り知らんとなれば、書籍より外にはなし、書籍を刊行して世に傳えんは、仁政の第一なり。』

と述べ、読書の大切さ、出版の高い位置付けをしています。書店人としても、家康は素晴らしい人だと言わざるを得ません。

 

   人間学塾での感想は

・家康の幼少期、今川家へ人質にされていた経験からの「忍耐」に重きを置かれている人生訓に感動した。 

 

・仕事上、他人の言う通りやらなければならないことが多いので、「我慢」の家康に学びがあった。 

 

・最後に勝つ人としてのバランス感覚がすばらしい。 

 

・幼少期からの学びを人生に活かしていることが心に響いた。また、戦国期から読書の大切さを訴えていたこと、そして、出版をすることが為政者として重要であることを述べているのには感心致しました。  

第15回大人の人間学塾課題図書

道をひらく』(松下幸之助著、PHP研究所)

 

人間学塾での感想は

 

・日々仕事している中で感じたことが、ズバッと語られていることに驚いた。 

 

・幸之助さんの視野の広さには学ぶ点が多い。 

 

・「言葉の花束」を読む心地だった。目次を見ると、各章が「~のために」とあげられているので、自分が悩んでいる項目に合わせて読んでいきたい。 

 

・PANASONIC社員は凄いバイブルを持っているんだという感慨。この内容が心に、脳に定着し、行動が変われば、平和で繁栄すると思う。 

 

・読めば読むほど、禅やタオを感じる。「ありのまま」「素直」「謙虚」など、2元論でない1元論、すべてはつながっているという考えが全篇に網羅している。 

 

 私個人としては、「手を合わす」(174ページ)がドーンと響きました。

 「客が食べ終わって出て行く後ろ姿に、しんそこ、ありがたく手を合わせて拝むような心持ち、そんな心持ちのうどん屋さんは、必ず成功する」 

 うどん屋を本屋に変えて、常に問い続けたい。 

 第14回大人の人間学塾課題図書

啓発録』(橋本佐内著、夏川賀央訳、致知出版社) 

 

・「酔ったように生き、夢のように」生きていると感じます。そんな生き方もいいと思います。 

 

・「志」を立てないと、魂のない虫の生き方になるなら、今からでも立志すべき

 

 ・詩文や読書というのは、学問においては「道具」に当たるのだから、インプットした道具を、アウトプットの行動をしないとダメだ

 

 ・14歳でここまで書けるのは天才だ

 

 ・左内の読書は四書五経を中心に読んだろうから、基本は古典に立ち返るべき 

・橋本左内という人物を初めて知った~井戸書店の「大人の人間学塾」は益になる 

 

・武士として自分自身を奮い立たせるために書かれた本書は現代でも通用する書 

 

・左内が武士道の沈滞を嘆くように、日本では武士道がなければならないと確信した

 

 私自身は、西郷隆盛が西南の役で自害した時に、西郷どんのかばんに左内の手紙があったという逸話だけでも、左内の人物の大きさを感じました。このような形で他人に影響を与えることができる素晴らしさを知りました。 

第13回大人の人間学塾課題図書

努力論』(幸田露伴著、夏川賀央訳、致知出版社)

 

  人間学を学ぶ上で、必ず通る道の1冊が『努力論』。明治の文豪・幸田露伴による、人生を歩むための手引書ですが、原書で読むとなかなか難解です。夏川賀央氏による現代語訳で、現代日本人には理解しやすい希望の本となりました。

 「努力」と聞いて、あぁ無理と思う人もあるでしょう。しかし、オリンピックを見て、自分の目の前にある課題に対して、「やらねば」と少しは心動いたことでしょう。リオ五輪のメダリストは言うまでもなく、各競技出場者においても並々ならぬ練習の結晶が光り輝く現実を生み出しています。努力の賜物しかありえません。頭ではわかっても、身体では表現できない人へ向けて、この『努力論』は明確な導きを与えてくれます。

 まず、努力する自分を作りだせ!自己改造を訴えています。そのためには「幸福三説」を目指せ!とは理解しやすい。幸せを取り尽くさず、将来のためにとっておく「惜福」、幸せは必ず、人と分かち合えという「分福」、そして、未来の人々も幸福であるよう、幸せの種を播く「植福」の観点から、努力を怠るなと教えられれば、何とかできそうな気がします。努力の目的が自分の幸福のためだけ、利己に留まるのではなく、将来にまで影響を及ぼすという視点を持って事を為す。自分の身体の外向きに付いている目が現実だけでなく、見えない将来を想像し、力を注ぐと結果が変貌します。今回の五輪出場者も、自分たちのベストな身体表現が2020年の東京五輪に結びつくというコメントを語っていましたね。

 努力しようにも気が散ることばかりで集中できない現実があります。特に、スマホの存在は気を散らす機械の象徴です。気を散らさないためには、いまここに全気全念でこれにあたれと言い、好きなことに没頭せよと述べています。全身全気で取り組めば、嫌いなことも好きになるのは禅僧の修行の姿に通じます。

 そして、気に関しては、「意識して気を張れ!」、すなわち、「私たちと私たちの信念が一致することの自覚」からしか結果が出ないと論じています。これはスポーツなどで言う「ゾーン」に入ること、努力しているのではなく、無意識のうちに努力しているようになっている状態になることでしょう。

 本書は青年ばかりでなく、10年に1度は読み、自らの人生の歩みの是正の書として活用できれば良いと感じました。

 

  人間学塾での感想は

・自分のお金や時間は自分のものだけでない、他や将来の多くの人々を利するものということを理解して行動することにしたい。

 

・自分には分福や植福などできていない。惜福で精一杯。多くのことを学びました。

 

・植福のことを学び、ある人をイメージしました。自分ではなかなかできていないが、自分の好きな分野に集中してみたい。

 

・「気」について、多くのページを割いていることに驚いた。人間、やはり、「気」が大切で、「気」をしっかり持つことから始めないといけないと感じた。

 

 最後に、惜福以前の「有福」とはどういう状態かを論じ合いました。「いまここに生きること」こそが「有福」という認識であれば、「惜福」「分福」「植福」は誰にもできるという結論に落ち着きました。

 第12回大人の人間学塾課題図書

禅とタオ』(板橋興宗・加島祥造著、佼成出版社)

 

人間学塾での感想は

 

・仙厓和尚の言う、○(まる)の人間になるためには自然に触れて、自然のエナジーを受けること。

 

・「足るを知る」ことの本質を知りました。いまここで足りており、富者であるという意識は持ち続けたい。 

 

・仕事をしていると、仙厓和尚の言う、□(しかく)の人間にならざるをえない。しかし、○に戻ろうとするバランスを持ちたい。 

 

・いまここに集中することが大切である。 

・自然に戻れというメッセージを強く受けた。 

 

タオや禅の本質は難しいですが、少しながらも理解を得た今回でした。 

第11回大人の人間学塾課題図書

『西郷南洲遺訓』 (桑畑正樹訳、致知出版社) 

 

人間学塾での感想は

 

・今こそ読むべき本です。西郷さんの思考の柔軟性は学ばなければなりません。 

 

・民への慈悲、慈しみの心を上に立つ者が持つことは必須です。 

 

・古の知を学び、行動に必ずつなげ、そこから気づき、さらに学ぶことの循環を自分に身に付けたい。 

 

・「真の文明とは何か」は心に響きました。慈悲深く、正義の心で相対すことこそが文明国であることは君子の民に対する姿と同一。 

 

・敵方であった庄内藩士が西郷さんに弟子入りして、その教えを綴った事を知り、西郷さんの人間力の高みに触れました。人として尊敬される人には敵味方は関係ありません。 

 

ifの歴史はありませんが、明治政府で西郷さんが中心的存在で居続けたら、日本の国柄も変わっていただろうなぁと考えます。 

 

・政治家を目指す人の必読の書。逆に言えば、多くの一般平民が読んでいたら、選ばれる人は自ずから変わるでしょう。 

 

 その人の志、理想、思考がその生き様にまさに表現された南洲翁。「声高に」言いましょう!『この本は多くの人に読んで欲しい』と。 

第10回大人の人間学塾課題図書

炎の陽明学 山田方谷伝

(矢吹邦彦著、明徳出版社、本体価格3,300円) 

 

山田方谷と言ってもなかなか知られていない人物ですが、幕末の備中松山藩の財政再建を一気に成し遂げた人物です。10万両(現在の貨幣価値で300億円)の負債を、7年で払拭し、逆に10万両の余剰金を作り上げました。 

 

 農家の倅として生まれた方谷は、山田家の再興のため、子どもの頃から勉学に励み、神童と呼ばれるほどになりました。しかし、14歳で母が亡くなり、1年後には父も失い、家業を継ぎます。彼の才を惜しみ、藩主坂倉勝職(かつつね)が二人扶持の奨学金を出し、学びの道に戻りました。その後、京都遊学、江戸では昌平黌に学び、佐久間象山と並び塾頭になった。

 

 藩主が坂倉勝静(かつきよ)になり、抜本的な藩政改革を推し進める中で、山田方谷に元締役及び吟味役を拝命し、藩の財務一般を管轄することになりました。大なたを振るう改革は 

 

 ①財務状態の藩士への公開(表高5万石に対し実石1万9千石、10万両の負債状態) 

 ②大坂蔵屋敷の廃止、自力で米の売買を行う 

 ③信用を失った藩札を公前で焼き払い、新しい藩札を発行 

 ④領内から取れる砂鉄で備中鍬を製造販売、その他特産品も開発 

 ⑤下級武士に新田開発を奨励

   ⑥農民による農兵制を新設、欧米の新兵器の導入  

 

と、幕末の薩長土肥列藩のさきがけのような存在となりました。

 

 彼の思想のベースは陽明学。「致良知」と「知行合一」の陽明学を、「誠」と解釈し、「言ったことは成す」を真髄と考えました。 

 しかし、藩主坂倉勝静は筆頭老中となり、幕府の中枢のため、官軍に攻めたてられたが、方谷による無血開城により、方谷は隠居の身になります。 

 明治新政府は彼に大蔵大臣就任を依頼しますが、頑なに断り、農夫と塾長として田や人を耕しました。 

 彼こそは代表的日本人に加えてほしい。時代は違うとはいえ、1000兆の負債を抱える日本は彼の生き様を参考に財政再建に努めてほしいと思います。 

 

大人の人間学塾終了後、方谷のゆかりの地を巡りました。 

 板宿を午前10時に出発し、新神戸からのぞみに乗車、岡山で伯備線に乗り換え、車窓の高梁川の滔々と流れる様を見ながら、正午過ぎに備中高梁駅に到着しました。駅舎が立替中で、高梁の武家屋敷をイメージしたような建物でした。 

 駅前の食堂で腹ごしらえを終え、午後1時にバスに乗り込み、目指すは備中松山城。標高430mの山城は、その天守閣を晴天に輝かせ、往時をしのぶにはもってこいでした。NHK大河ドラマ「真田丸」のオープニングに城の石垣が使用されており、その効果もあってか、大勢の方が登城されていました。眼下の高梁の街は小さく、この山城を奪い合う戦いがあったと知って驚きました。 

  山城を後にして、城下の街並みに足を伸ばしました。まずは、山田方谷先生家塾 牛麓舎跡、武家屋敷、小堀遠州作の頼久寺庭園、を見学し、郷土資料館前の方谷先生の銅像前で記念撮影もしました。 

 今回は時間がなかったので、方谷先生晩年の長瀬塾、方谷駅、方谷園には行けませんでした。この日は抜群の快晴で、帰路の新幹線岡山駅のプラットホームからの夕陽は美しかったですね。 

 本を読み、方谷先生の生涯やその思想を知り、現地を訪れることにより、その理解はさらに深まりました。 

第9回大人の人間学塾課題図書 

『武士道』(新渡戸稲造著、夏川賀央訳、致知出版社) 

 

人間学塾での感想は

 

・日本には宗教教育はないが、日本人の屋台骨は「武士道」であり、日本人として生まれた瞬間から教育が始まっていた仕組みは素晴らしい。しかし、現代では会社人養成教育のため、また、家庭教育が貧しいため、屋台骨そのものがぐらついている。 

 

 ・「158分で読めます」とあるが、欧米の教養が身に付いていないので、読み進まなかった。しかし、戦う武士も人としての内面を磨くことの重要性を要求されていることは驚きを感じるとともに、人の身分としての役割以前に「人としてどう生きるか」が問われているのは当然と言えば当然。 

 

・学校教育でしっかりと「武士道」を学ぶべき。 

 

・内面を表現するための詩歌を読む古の人の奥ゆかしさも武士道であることを認識した。 

 

・書店人としては、日本昔話や日本の文化の代表である歌舞伎、文楽を伝え、販売していくことが武士道の伝播に繋がることがわかった。 

 

 日本人としては「いつか読んでみたかった日本の名著」の代表格であることでは間違いありません。 

第8回大人の人間学塾課題図書

『1/4(よんぶんのいち)の奇跡 「強者」を救う「弱者」の話(山元加津子・柳澤桂子・四方哲也・新原豊共著 マキノ出版、本体価格952円)

 

  アフリカのマラリアに罹りにくい人を遺伝子レベルで研究したら、その兄弟には4分の1の確率で、重い障がいを持つ人も現れてしまう。4人の子どもが生まれた場合、必ずそのうち1人は重度の障がいを持つという事実。つまり、人間が生存して行くにはマラリアに「強者の遺伝子」だけでなく、重い障がいを引き受ける 「弱者の遺伝子」も必要だったということ。このことから、障がいを持つ人の存在がなければ、今の自分もないという理解が生まれます。

 

  しかし、科学的な1/4の奇跡だけでなく、宇宙をつらぬく「本当のこと」こそを3/4の人間は知らなければなりません。それは、 

 

 ・南米・インカの人たちは、病気や障がいのある人が、とても大切な存在だということを知っていた。 

 ・昔の人は、まわりにある「もの」も「こと」も「ひと」も、すべてその人に必要だから、そこに「ある」ということを知っていました。 

 

などです。科学的に立証しなければ納得できないのではなく、本当のことを知っていれば、そこに区別や差別は存在せず、そこにあること自体が大きな意味を持つ。このことを納得できるか否かが、人の成長にとってはトリガーになると思います。そして、宇宙をつらぬく「本当のこと」は健常者ではなく、障がい者が原初的に持っているものであり、我々は彼らから謙虚に学ぶべきなのですね。そういう意味では山元加津子先生は通訳者なんでしょうね。 

 

人間学塾での感想は

 

・生きるには必ず意味がある

 

・障がいって何か?わからなくなってくる

 

・つながって生きていくことが大切なことがわかった

 

・自分自身が「本当のこと」に対して、どういう考えを持つか問われている

 

・多様性は尊重されなければならない 

 第7回大人の人間学塾課題図書

留魂録(吉田松陰、致知出版社) 

 

人間学塾での感想は

 

・日本のことを考えて行動する人が現在はどれだけいるのか?幕末の志士の代表格である松陰は時代よりも先を行く行動派で、刑死したのは誠に惜しい

 

・世の変化を察知して、ここまで行動できる人が日本にいたことを誇りに思う

 

・明治維新だけでなく、辛亥革命や韓国の指導者にも影響を与えていたことに驚いた

  

・松陰の座右の銘『至誠』は『実行』『専一』『継続』を意味し、尊王への恩の思いから動く実行力は脱帽だ 

 

・いつ死んでも悔いること無いように生きる、そのためには平日の覚悟を持って行動することの大切さを知った 

 

・至誠のベースが学び、特に読書に集中していたことは真似する必要がある 

 

特に、現代日本の置かれている状況は幕末同様、かなり危機的なので、高い志を掲げて実行することは重要であることが理解できました。 

第6回大人の人間学塾課題図書

平凡を極める生き方(鍵山秀三郎著、致知出版社)

 

人間学塾での感想は

 

・書名からのイメージでは、「平凡を極める」のなら簡単ではないかと思われる方もいましたが、「平凡」とされる掃除をやり続け、掃除の質を高め、「非凡」な存在となられた鍵山さん。初めて知ったという参加者にも、一所懸命に至誠を尽くす生き方は伝わったでしょう。

 

・食事をして体を支えるように、心の栄養補給に「掃除」をすることを推奨されています。自身の身の回り、職場、地域の掃除は環境の整備だけでなく、自分自身の「心の掃除」でもあります。自らの心を磨く術は毎日の生活にあり!それを怠ることなく、進んで行うことこそ、非凡への道です。

 

・「請求書の人生と領収書の人生」という節があり、『際限なく求めて生きるのは、「請求書の人生」である』として、『求めるばかりでなく、今与えられているものごとに感謝の心をもつ「領収書の人生」を歩め』というメッセージに感銘を受けました。我々現代人が置かれているこの時代、「欲しい」「求める」意識を植え付けられるばかりですが、それ以前に「いま、ここ」に生きていられることに感謝する心の持ちようこそが試されているのでしょう。「ありがとう」ございますは人への感謝の言葉だけでなく、今生きていることを許してくれていることまで含まれることを認識する必要があります。 

第5回大人の人間学塾課題図書

日本のこころの教育(境野勝悟著、致知出版社、本体価格1,200円) 

 

日本のあたりまえの根幹を知る書。ミッションスクールの国語科の教師であった著者は、ドイツ人校長に、「さようなら」の意味を問われ、困惑します。返答できない彼に、校長先生は「こんにちは」にも言及しますが、無しのつぶて。「国語の教師として、日本人の子供たちに、いったい何を教えるつもりなんだ!」と叱り飛ばされる顛末。この1か月後、校長室に呼ばれて、「日本は明治維新後は、欧米の真似をし、日本人の心をすっかり忘れてしまったんじゃないのかなぁ。(中略)日本人って何ですか?日本人の心って何ですか?」

 

とヒントになる呼び水をいただき、考え抜きます。 

 

 人間は太陽がなければ生きられない事実から、日本における太陽の存在を追求します。すると、「太陽さんに感謝して、みんなで仲良く太陽のいのちを生きる~これが、日本人の心棒だった。」という答えに到達しました。日本人も、日本人の心も太陽が形作ったもの。感謝の気持ちに「お蔭様」というのも納得できます。日本という国の根源である精神、文化、伝統の価値を知れば、海外でも堂々と発言できるし、自国の良さを述べることが出来ます。 

 

  人間学塾での感想は 

 

・母が「太陽」であるということは平塚らいてうの言葉通りであるし、小林多喜二の母の紹介で良く理解できました。 

 

・境野さんの教職時代のドイツ人校長の視点の違い、考え方からこの本が生まれた。そして、日本人が太陽を大切にし、感謝してきたこと、そこから何事に対しても感謝して生きる日本人の姿が繋がることに感動した。 

 

・日本の国旗が生まれた経緯を初めて知った。「中黒」にならなくてよかったと共に、現在のネット社会だと、情報過多でデザインできないので、江戸時代にシンプルな旗に決定して良かった。 

 

・君が代を作った女性が素晴らしい。前回の「茶の本」でも学んだように、一つの花や石に素晴らしい価値を生み出す民族は自然を敬っていたがための結果だった。その根本に太陽があることは素敵だ。 

 

・境野先生の高校生に対する所作、言葉が謙虚で良い。また、職業柄、「さようなら」は使わず、「お大事に」「お気をつけて」という別れの言葉を発しているが、「さようなら」の意味を知り、これからは意味の一つ一つを知り、丁寧に使いたい。 

 

戦後教育で抜け落ちた、しかし、日本人である以上素通りできない根幹の部分。それと、地球に生まれた生物は太陽の有難味を知っているはず。もともとは人間も含めて自然崇拝、アニミズムだったが、神の存在を教える宗教が発生後は、自然のことを意識しなくなりました。しかし、昨今の地球環境や貧困問題はボーダレスの危機を生んでいます。このことを考えても、人間としての根源、太陽や自然に育まれて生きていることを認識することが必要な時代になっています。 

第4回大人の人間学塾課題図書

茶の本(岡倉天心著、致知出版社) 

 

 茶道に疎いものでも、読めば、日本文化の粋こそ茶道であることがわかり、この精神こそを、現代日本人は学ばないといけないと感じました。素読の後、『茶の本』に関する意見交換を行いました。 

 

人間学塾での感想は

 

・小さなこと、細かいことを大切にする精神が美しい 

 

・そこにあるものを美しいと感じる心を養う 

 

・岡倉天心の美に対する西洋批判に溜飲が下がった 

 

・静謐さの中にある美を感じることの大切さを再確認した 

 

・今ある自然の美を評価する心は素晴らしい 

 

・西洋にとっては理解することが難しい、白黒付け難いものを 貫いていくことが日本文化の道 

 

・茶は飲むものと思っていたが、教養を求められる 

 

・老子と禅の共通点は認識していたが、茶がその架け橋だとは知らなかった 

 

 訳者である夏川賀央氏の解説の一文を最後に読ませていただきました。 

 

 「『武士道』を、己の信念をストイックなまでに貫く「戦う人」の哲学とすれば、『茶』はそれと正反対にある『平和の哲学』。戦っているはずの人々が武器を捨て、身分の差も無視して、穏やかで優雅な時間を共有しようとしました。」 

 

 一杯の碗に心の豊かさと美を感じつつ、その平和な時を味わう。日本人の再確認せねばならないことかもしれません。 

第2回大人の人間学塾課題図書

風姿花伝(世阿弥著、致知出版社) 

 

まえがきに、「ぜひ味わってほしい、『日本で最も古いビジネス書』の素晴らしさ!」とあるように、能の手引書でありながら、自分に置き換えて読めば、ビジネス書の棚はこの1冊だけでいいと思いました。

 

  人間学塾での感想は 

 

・能の「花」を目指すことは、観客に感動を与え、幸せにし、寿命まで伸ばすとあるのは、現代の会社の経営理念の根幹です。 

 

・記されたのが今から600年前の室町時代で、寿命が短いながら幼少期はゆったりと育て、しかし、30代に芸の絶頂を迎え、40代には次世代へバトンタッチをすることを示唆している。寿命の長い現代にもかかわらず、幼少の頃から詰め込み教育を施しながら、3040代ではまだまだひよっこの存在でしかない社会人。このギャップは何なのでしょう? 

 

・技術である「種」を習得し、新しい「花」を咲かせていく。その「花」の本筋は、その芸人の心、人柄が如実に表れている。そのためには、人間力を高めるために、常にアンテナを張って、今より向上する、新しいことに挑戦することが大切である。 

 

・「初心を忘れてはいけない」という意味がわかりました。「初心者の頃から学んできた演目の数々」をいくつになっても忘れてはいけない、いつでも演じられるように用意すること。「花」を示すための「種」を失うなって、今の人にも通じている。 

 

・芸(仕事)積み上げていき、多くの引出を持ち、観客(顧客)に合わせて披露(サービス)していくのは大切。 

 

・価値は受け手が決めるものである。送り手と受け手のギャップを知り、それを埋める、または、それを利用していく技量も蓄えたい。 

 

600年前も今も何にも変わっていない。つまりは「風姿花伝」も色褪せることなく、生き続けている、そんな古典に出会えて良かった。 

 

・「ひたすら世間のニーズに応えるような能ばかりを求め続ける」ことが道が廃れていく第一の要因ならば、演者(企業や店)の価値を提供し、新しい価値を観客(顧客)に創造することが「花」と思いました。 

 

 『風姿花伝』は間違えなく、真のビジネス書です。他に必要ないのではないでしょうか? 私自身も、素晴らしい書籍に邂逅し、幸福感に満ちています。 

第1回大人の人間学塾課題図書

代表的日本人(内村鑑三著、致知出版社) 

 

  明治時代、海外の人々へ日本を紹介するために書かれた名作。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮こそが日本を代表する人物として書かれています。

 

人間学塾での感想は

 

・徳を積むことと利他の大切さを学んだ

 

・素晴らしい人物に触れることができた

 

・家庭を大切にする、質素倹約は人間として基本である

 

・藩の財政再建に「怠け者」を無くすことが印象的だった

 

・経済第一でこの世は成り立たないはず、心、道が大切

 

・自分の中の日本人らしさを発見できた

 

・教えを動作にすることこそが重要である

 

・教育とは何かを考えさせられ、実学ばかりではダメ

 

・国を背負う人がいたことは日本人として誇りである

 

・信念を貫くことを心掛けたい

 

・クールジャパンの真髄は『代表的日本人』にあり、日本人の特性を全面的に出せば良い