私たち、人間はなぜ本を読むのでしょうか? 私自身、親や学校で教わることなく過ごしてきました。ここで少し考えてみましょう!次の文章は講演録です。今までの読書人生を省みて、お話させてもらいました。 

大手前高校文化講演会 2017(平成29)年10月18日(水)

1年前に要請を受けた、「大手前高等学校文化講演会」。90分の時間で「読書の大切さ」を全校生徒1080名の前でどのような内容でお伝えするか、ゆっくりと考えました。流通科学大学1回生の文章表現の講義に、ゲストティーチャーとして2年連続でお話したものをベースに、彼らが今後歩む人生の中で読書をいかに位置付ければ良いかを検討してみました。

 

 さて、実際の講義レジメは以下の通りです。講演題は

 

あなたにとって、インプット=読書とは何か? ~人生からみた読書論~」

 

.自己紹介

.論語を読もう(素読)

.論語を読んでみて

.読書の効用 

.しかし、読書は嫌い⁉ 読書が好きになるには 

6.読書を好きになるには 

7.今を生きる大手前高校生 

.あなたの人生におけるの読書の位置付け 

.デジタルと活字 

10. 何を読むか

 

 図書館担当の蜂須賀先生からの過分な紹介の後、自己紹介をし、大手前高校生の読書実態の調査を行いました。毎月1冊読んでいる人、毎月2~3冊読んでいる人、毎月4冊(週1冊)読んでいる人、その内で毎月10冊読んでいる人、残念ながら1冊も読んでない人と、該当する時に拍手をしてもらいました。圧倒的に多かったのは読書をしない人でした。月10冊の人の拍手音も僅かながら聞こえました。ここで、次の表を提示します。 

毎月

年間

健康寿命(70)

0

0

0

1

12

840

10

120

8400

   誰にも与えられた時間は平等であり、その時間を何のためにどう使うかはその個人に委ねられていますが、積み重ねは大切であることは自明の理です。

 

 次に、読書を全員でする体験をしました。「論語」の素読です。井戸書店では毎月第2日曜日午前9時から、地域の子どもたちと一緒に論語を学ぶ「いたやど子ども論語塾」を開講しており、もうすぐ7年目に突入します。小学生と読んだ代表的な論語のいくつかを、出席者全員で素読し解説しました。論語とは2500年前の孔子の語録集で、512の短文が全20篇の量で、いかに生きるかを説いています。論語で訴えていることは「思いやり」「仁」です。これを身に付けることを推奨しています。

 

子曰わく、君子は義に喩り、小人は利に喩る。

し のたま    くんし  ぎ   さと    しょうじん り さと

【思いやりのある君子は正義、正しいか間違っているかにこだわり、思いやりのない小人は利益があるかないかを考える】

 

子曰わく、君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是れに反す。

し のたま    くんし  ひと び  な      ひと あく な      しょうじん こ     はん

【思いやりのある人は人の長所を見、短所はあえて見ない。思いやりのない人はこの反対である。】

 

子曰わく、性、相近し。習い、相遠し。

しのたま     せい あいちか    なら   あいとお

【生まれてくるときはみんな一緒だが、その後に学ぶか否かで人は違ってくる】

 

子曰わく、過ちて改めざる、是れを過ちと謂う。

し のたま   あやま  あらた       こ    あやま  い

【間違っても改めないことこそが間違いである。誤ったら直すことが人間大事である。】 

 

孟武伯、孝を問う。子曰わく、父母は唯其の疾を之れ憂う。

もうぶはく こう   と   しのたま       ふぼ  ただ そ やまい  こ うれ

【弟子の孟武伯は親孝行について質問した。すると、孔先生はお答えになられた。両親は君が健康かどうかを気にしている。親孝行とは子どもが息災であることだ。】

  

子貢問いて曰わく、一言にして以って終身之を行うべき者有りや。

しこうと     い       いちごん        も        しゅうしんこれ おこな もの あ

 

【弟子の子貢が一生でこれだけはやるべきこととは何かを訊いた。】

子曰わく、其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿れ。 

しのたま     そ  じょ  おのれ ほっ     ところ ひと   ほどこ   なか 

【孔先生はお答えになられた。それは思い遣り、恕だよ。自分がやられて嫌なことを他人にするんではないよ】

  

子曰わく、学びて思わざれば、則ち罔し。思いて学ばざれば、則ち殆し。

しのたま    まな    おも        すなわ くら  おも   まな      すなわ くら

【学んで自分で考えないのはダメだよ。また、考えたからといって、学ばないのもダメだよ。】

 

 みんな大きな声で素読してくれました。漢文の授業で学ぶ論語とは違い、現代のニュースなどで登場する話題と合わせて、2500年前から読み継がれている論語を味わいました。未だに読まれているということは、人間が成長していない証拠であり、時代を経ても大いなる価値を持ち続けています。

 

 論語は学校で小学校5年生から学ぶと聞いていますが、どういう印象を持っていますか?漢文の授業は寝る時間と思い、テストに出るところだけを勉強していると思いますが、実際の生活と照らしあわして読むと、論語も活きてくることが理解できると思います。例えば、「孟武伯、孝を問う。子曰わく、父母は唯其の疾を之れ憂う。」を読めば、母の日や父の日などにモノを贈ることよりも、「元気でここまで育ててくれて、本当にありがとう。」という言葉が、親にとっては有難いはずです。あなたの健やかな姿が親にとってはどれだけ孝行か考えれば、孔子の言葉も胸に響くはずです。

 

 論語を読んでみて感じたことを考慮に入れて、読書の効用を考えてみましょう。

 

 まず、今、論語を読んで、皆さんは「2500年前の孔子と対話」したことになります。論語は孔子の語録集ですから、まさに孔子とお話したわけです。ここに読書の効用の一つがあります。それは、「先人たちとの心のふれあい」です。このことをフランスの哲学者であるデカルトは次のように言っています。 

『すべて良き書物を読むことは、過去の最も優れた人々と会話をかわすようなものである。』 

 次に、論語を読んでみて、自分自身が思いやりのある人になれると思った方もいるでしょう。良書を読むことは、自身の「人格形成」に寄与します。そのことを、英国の作家であり、医者だったサミュエル・スマイルズは 

 『人の品格はその読む書物によって判断しうること、あたかもその交わる友によって判断しうるごとし。』 

とおっしゃっています。 

 最後に、孔子のお話を知って、心豊かになれそうだと思う人もいるでしょう。活字を使う唯一の生物、人間として、読書は心の栄養分となります。これについては、神戸の教育哲学者の森信三氏の言葉 

 『読書は心の食物。肉体を養うために毎日の食事が欠かせないように、心を豊かに養う滋養分として読書は欠かせない。』 

は揺るぎないものです。

 

 でも、読書は嫌い!という大勢の方は正しい。なぜなら、日本語は教育課程では評価するために教えられたからです。好き好んでやりたかったから学んだのではないというでしょう。さらに、夏季休暇の宿題の最大の頭痛は「読書感想文」です。読むのもしんどいのに、感想を書くことを強いられると、読書に嫌悪感が醸成されるのは当然かもしれません。

 

 大人たちからは「読書は生きていく上で大切だ!」といわれるけど、邪魔くさいものは邪魔くさい。ここで、2人の人物を紹介しましょう。彼らはインプットの読書をどのようにしたのか?

 

 1人目は、くまモンの生みの親、水野学氏。

 

アートデレクターの彼は、デザインに関して、

 

『センスがある人はいるが、センスがない人はいない。』

と言い、

『自分にはセンスがないと思っている人がいたら、ないのは知識です。』

と言い切り、その上で、『知識を貯えるには、質よりも量です。』と断言されています。つまり、『インプット量がアウトプットを決める!』という結論になります。

 

 もう1人は、皆さんご存知のさかなクンです。             

  彼の夢は「東京水産大学の教授になる」ことでした。魚の好きな彼の少年時代は、魚の絵を描くことが好きで、学校へ図鑑を持参して、授業中にもかかわらず、一所懸命に絵を描いていました。帰宅すると、魚屋さんや水族館に出向き、魚のことを訊きまくる生活を送っていました。もちろん、学業は疎かになり、大学進学なんて夢のまた夢。しかし、彼の魚の知識を活かす状況が訪れます。魚に関するテレビのクイズ番組で、あのキャラクターで大活躍します。現在の彼は東京海洋大学客員准教授を経て、名誉博士となり、魚類学者としての地位をしっかりとつかんでいます。魚という領域だけながら、彼の魚の知識は膨大であり、アウトプットとして、絶滅危惧種のクニマスが西湖で生存していることの判明に大きく寄与しました。『インプット量がアウトプットを決める!』の良い例ですね。興味のある良書をバランスよく、読書をすることで、知識や教養が実に付き、それがベースとなって、思考が膨らみ、イノベーションを起こせるわけです。 

 この2人から、読書を好きになるためのヒントがあります。それは、 

『好奇心』  『主体性』  『読書好きの友だち』 

です。いかに自分にとって興味深いテーマを持ち、それについて主体的に知りたい欲望を持つか。また、読書好きの友だちがいると必ず影響を受け、本のページをめくる機会が増えます。

 

 先ほど述べたアウトプットについては、私たちの身体でもその大切さは明白です。身体の維持や健康のために、必ず食べて栄養を吸収します。老廃物として糞尿を体外にアウトプットとして排出します。私たちは健康診断では、検便や検尿をします。インプットである食の良し悪しは自分で判断できますが、健康か否かはアウトプットをチェックします。排出物あっての健康です。また、呼吸も同じです。息を「吸う」から生きられると考えられますが、熟語としては、吐く「呼」が先でアウトプットが優先されます。呼吸法でも吐く方が重要視されているのもうなづけます。このように、インプットとアウトプットはバランスがあり、どちらかだけでは片手落ちです。森信三氏の言葉通り、心や脳のためにも読書というインプットが大切であり、それだけでなく、皆さんが嫌う読書感想文の作文や読書の感想を友達などへ一言コメントしたり、読む蓄積からの発想など、アウトプットは必要不可欠です。

 

 あなたたちが学んでいる大手前高校の校是は 

『英姿颯爽』  『強き信念(まこと)  『高き理想(のぞみ)』 

であり、生徒像としては 

『高い探究心と学力』『高い社会貢献意識』『多様性の尊重とたくましい人間力』 

を求められ、あなたたちの将来像は 

『グローバルリーダー』 

を目指すべき人としています。『グローバルリーダー』とはどういう人材か?それは、 

地球上における様々な課題に対して、高い志をもって立ち向かうとともに、周りの人と共に解決に導く人」 

です。生きる理念を抱き、探究心、他利心、多様な視点も兼ね備え、なにごとに対しても堅忍不抜の精神の持ち主でなければならないと思います。

 

次に、日本、いや世界からも期待される存在である君たちが人生において、どういう環境に置かれるかも考えてみましょう。大きくは次の2点が無視できません。ひとつ目が 

「長寿化」です。

 

 

 『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)によると、2007年生まれの50%の人は104歳まで生きると予測されています。ミレニアム生まれのあなたたちは半数が102歳まで生命を 全うできそうです。長い時間を幸せに暮らすには、現代の高齢者が生きてきた、教育 → 仕事 → 引退という3ステージで終わることなく、引退後の資金を得るためには仕事のステージ年数が長くなり、不確実の社会の環境下、仕事の内容も大幅に変容することから、キャリアを維持または向上させるには、教育 → 仕事 → 教育 → 仕事 というように次の仕事への移行期間に再度教育をしなければならない。また、お金という有形の資産だけでなく、家族、友だち、地域コミュニティーなどの無形資産も重要視せざるおえなくなります。

 

 もう1つの特徴は「AI」です。2030年には特定AIが完成し、2045年には汎用AIが登場します。2030年には29~31歳、2045年には44~46歳という年齢になり、102年の自分の歴史の半分でAIが自分を取り巻く環境をどう変えるかを想像しておかなければなりません。

 

 では、これからの先の読めない時代にどういう能力を持ち合わせておけば、荒波を乗り越えることができるかを考えましょう。まず、AIが進歩すればするほど、人間らしい能力である「コミュニケーション力」や「感情コントロール力」がますます重要になるでしょう。また、高い「創造力」や「想像力」はAIよりも人間の方が優れているはずです。それに、現在のデジタル環境下でも、便利がために使用しているデジタルのしくみに流されて、考えないでも生きていける、あるいは考えない方が楽であることは、地球上の生物で最高の脳を持つ人間の「思考力」を貶めている。主体的に「考える」習慣はあなた自身を助けるでしょう。さらには、何が起きるかわからない時代には、多様性を受け入れる「柔軟性」は不可欠であり、自らが自己の人生を形作る自己主体性は必要になります。最後に、あなたが生きている意味、存在意義、生存理念をしっかりと形成し、ぶれない人生を設計することが何よりも大きな鍵となるでしょう。

 

 ここまで考察していくと、誰しも人生におけて「学ぶ」ことが大きな価値を生むことは自明だと思います。未知なる時代を生きていくからこそ、学ばないと何も生み出せないと考えます。それでは、学びについて考えていきましょう。 

 ライフネット生命創業者で、現代日本の代表的な教養人である出口治明氏は、「人生は学びの連続である」とおっしゃられており、学びは次の3つで行えると、『本の「使い方」』(角川新書)で述べられています。それは、①人に会う ②旅 ③読書です。人に会い、話を聴きたくとも、なかなか会えることも出来ず、旅立とうにもお金が必要です。読書は時空を超え、会いたいその人の著書を自分の好きな時間に読んで、その教えを安価に学べます。

 

 

 また、『自分を変える読書術 学歴は学〈習〉歴で超えられる』(SB新書)の著者・堀 紘一氏は、「学歴よりも、読書で『学習歴』をつくれ」というように、生涯にわたる学びには読書が最適であることを訴えられています。論語の「性、相近し。習い、相遠し。」はまさに正しい。

 

 それでは、読書を紙の本で読む方が良いか?デジタルで読んだ方が良いのか?これに関しては、紙で読むことをお薦めします。その理由を、数冊の本を紹介しながら解説します。 

 

 『やってはいけない脳の習慣』(横田晋務著、青春新書)では、仙台市の9万人の子どもたちのデータを収集、分析し、衝撃的な結果を発表しています。2時間勉強した後、2時間LINEをしたグループと、勉強もLINEもしなかったグループが同じ試験を受けて、どちらの成績が良かったか?後者のテスト結果が良かったことが判明し、デジタルの脳への影響の大きさを物語っています。

 

 

 それでは、なぜそのようなことが起きるか?『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった』(奥村 歩著、青春新書)では、スマホなどのIT機器からの過剰なほど大量な情報のインプットに脳が過労を起こし、「情報メタボ」「IT情報生活習慣病」を発症し、アウトプットがスムーズに行われない状況に陥っています。大量の情報処理でへとへとで、ろくに使われないままで脳の機能は低下し、脳の「考える」機能がフリーズし、集中力、思考力、判断力、意欲、創造力、企画力、コミュニケーション力、感情コントロールや遂行実行機能など悪化します。まさに、脳は情報のゴミ屋敷となっています。

 

 

 心療内科医の森田幸孝氏は、心療内科院数の増加はインターネットの普及に比例すると考え、デジタルが心を病む原因の一つと位置づけられています。デジタルの悪い点を5つ挙げられています。それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

であり、人間本来の能力を著しく貶める傾向があります。従って、デジタルは教養を得るための読書には不向きと判断します。

 

 読書の良さを理解した上で、それでは、何を読めばいいのか?その1つが「古典」です。

 

その理由を明確にしてくるのは、文字・活字文化推進機構会長・資生堂名誉会長でいらっしゃる福原義春氏です。

 

 「私はハウツー本も時には役に立つと思っているが、それはポテトチップスやチョコレートのようにおいいしいけれども、あくまでも副食やスナックであって、やはり主食であるご飯を食べないと健康な体は作れないと考えている。主食にあたるのはもちろん、先人たちが深い考えで書いた古典、あるいは人間や物事の本質を見極めようとする本といえる。」

 

 長い時代を超えて読み継がれる本には多くの知恵が籠っています。

 

 もう1つは、「心震わせる感動本」を挙げたい。本を読むことによって、心に温かい感動を呼び起こす本を読むと、生きる勇気も与えられるし、日々の生活の辛い思いを和らげてくれます。ここでは、2冊ご紹介しましょう。 

 

 『クラウディアの祈り』(村尾靖子著、ポプラ社)は、私がお風呂で読んでいて号泣した1冊です。終戦から八か月後の平壌、民間人の蜂谷彌三郎さんは、妻・久子さんと生後数か月の娘の目の前で、進駐してきたソ連軍に連行、シべリアへ抑留されました。厳しい収容所での生活も1953年(昭和28年)に刑が明けました。 しかしながら、日本への帰国ができず、ソ連国籍を取得した彼は、同じように無実の罪を着せられ、強制収容所での10年の刑を終えたクラウディアと出逢い、2人はお互いの境遇に同情し合い結ばれました。「日本人のスパイ」「スパイの妻」と陰口を言われながらも、仲良く暮らしていました。

 

 1991年のソ連崩壊という歴史が彼らに新しい人生を歩ませました。帰国というドアが開いたのです。ここから最終ページまで涙なしでは読めません。クラウディアの愛の定義を最後に記します。 

 

「他人の悲しみの上に自分の幸福を築き上げることは、人道上、決して許されるべきではない」 

 

 「ほんとうに人を愛するということは、その人が希望することを応援し、力になり、希望をかなえてあげられるように努力することだ」 

 

 もう1冊は、『1/4(よんぶんのいち)の奇跡 「強者」を救う「弱者」の話』(山元加津子・柳澤桂子・四方哲也・新原豊共著 マキノ出版)です。石川在住の養護学校教諭の山元加津子さんの子どもたちとのエピソードと、3人の科学者(柳澤桂子氏、四方哲也氏、新原豊氏)の遺伝子研究の結果のフュージョンはとても刺激的です。

 

 

 アフリカのマラリアに罹りにくい人を遺伝子レベルで研究したら、その兄弟には4分の1の確率で、重い障害を持つ人も現れてしまうそうです。4人の子どもが生まれた場合、必ずそのうち1人は重度の障害を持つという事実。 つまり、人間が生存して行くにはマラリアに「強者の遺伝子」だけでなく、重い障害を引き受ける 「弱者の遺伝子」も必要だったということ。このことから、障害を持つ人の存在がなければ、今の自分もないという事実になります。人間として「健常」「障害」という区別することが適当なのかどうか考えさせられました。生活上は致し方ないと思いますが、人間の存在としては全く同じです。この事実を多くの人に知ってもらいたい。

 

 最後に、21~22世紀を生きる、あなたたちの人生への応援ブックを、こちらも2冊ご紹介します。 

 

 『非属の才能』(山田玲司著、光文社新書)では、その道の第一人者の生き様に共通するのが「非属の才能の持ち主」、つまり、「みんなと違う」ことを志向し、やり遂げてしまう能力を有している人を解説しています。

 しかし、日本人が生まれて歩む道は、まさにこの反対の同調、同属です。「斬新な発想や創造性が決定的にものを言う今の時代において、疑問を持たず、自分で考えず、受験だけに努力し、そして良い群れに属さないと幸せになれない」と命令する形の学校教育はその典型。子どもの頃から強烈な同調圧力に曝され、「みんなと同じ」が求められる。購買活動でも、個人商店より郊外型の巨大ショッピングモールやアマゾンを選ぶのも、同調、同属の現れであり、「人生の定置網」にまんまとひっかっていると論じている点は傑作です。

 『好奇心を“天職”に変える 空想教室』(サンクチュアリ出版)の著者である植松 努氏も非属の持ち主です。子どもの頃に、「潜水艦をつくりたい」という夢を語ると、「どうせ、無理」と言われてきた彼は、おばあさんが本を買うお金は惜しみなく与えたため、独自に研究し、今では北海道で小さなロケットの開発に励んでいます。「楽な方を選ぶのではなく、楽しそうな方を選べ!」、「思いは招く」という人生の歩みは確かだ。

 

 

あなたの人生を豊かにするには、読書は不可欠な学びの泉です。

 

「No Book、No Life」を胸に生き続けてほしい。

 

自分を変える読書術

 

 活字離れ、本離れが進めば進むほど、読書に関する本が出版されています。出版側の危機感の現れかもしれませんが、就職後の人材としての生き残りには、読書は不可欠になることがさらに鮮明になってきたからでしょう。

 著者の堀氏は、「学歴ではなく、『学習歴』こそが重要だ」

と断言されています。学歴という価値観が仕事をするのではなく、自己の成長こそが仕事でのポジションを作りだします。そのためには就職後の「学習歴」が大切になり、その学習には、「読書」か、人の話を聞いて学ぶ「耳学問」しかありません。人脈の構築や話し言葉が論理性を育まない「耳学問」よりも、いつでもどこでも誰とでもアクセスできる「読書」の方が効率が良い。そして、読書の7つの効用や、読書の仕方を詳細に解説。読まなくても生きていけるが、人としての幸福を考えれば、今日からでもページを繰りましょう。

 最後に、論語を一つ紹介しましょう。「子曰、性相近也。習相遠也。 (子曰わく、性、相近し。習い、相遠し。)」とは、生まれてくるときは誰しも変わらないが、学習の量や質で人の一生は大きく変わるということ。2500年前から、その真理は変わりません。

(堀紘一著、SB新書、本体価格800円)